社D終わって1年経ちました ~会社員から公設試への転職~

この記事は社会人学生Advent Calendar 2023の7日目です。

社会人学生が終わって1年以上経っていますが、今年も書かせてもらいます。

adventar.org

目次

1.自己紹介

しゅんしんくん、現在34歳です。

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ちなみに去年の記事はこちらです。

koryor.hatenablog.com

 

人生的にはこんな感じです。年表にして振り返るとイロイロ見えてくるものもありますね。

・1989年   誕生

・2015年3月  修士修了 (工学研究科, 化学系)

・2015年4月  新卒で某企業に就職(研究開発部門配属)

・2016年   結婚

・2017年      第1子誕生

・2019年      第2子誕生

・2019年10月 社会人学生開始(工学, 機械工学系, 博士課程)

・2022年9月   博士課程修了

・2023年3月   新卒で入社した会社を退職

・2023年4月   公設試験研究機関に研究職員として採用(機械工学系)

   現在に至る

 

改めて振り返ってみても、2019年の第2子誕生と社D入学が被っているあたりや、2022年の博士課程修了直前と公設試験研究機関の採用試験が被っているあたりは狂っていたような気がします。会社員の仕事もゲキヤバだった時期でしたし(特に2019年)。

もう2度と経験したくないですね。

 

ちょっと今後の話にも関係してくるので、博士課程最終年(D3)あたりの時系列をまとめるとこんな感じです。前回の記事も参照。

・2022年10月    D3になる(注 秋入学です)

・2023年1月上旬 博士論文を執筆開始

・2023年1月中旬 転職活動開始

・2023年3月下旬 手ごたえのなさに転職活動中断、博論に専念を決意

・2023年5月   現職の募集を偶然発見

・2023年6月   現職へ応募、博論の1次審査の提出期限

・2023年7月   現職の1次試験(筆記)

・2023年8月上旬 現職の2次試験(面接)、博論公聴会

・2023年8月下旬 博論最終提出

・2023年9月   現職の採用が内定、学位記が着払いで送付(博士課程修了)

 

ちなみに、この間は当時所属していた会社で勤務していました。常に体調が悪かった気がします...。

 (注 イメージ図です)

2. 公設試験研究機関?

 おそらくはあまり馴染みがない人が多いと思いますので、まず公設試験研究機関(公設試)について説明します。主に都道府県(稀に市)によって設置され、地域産業振興を目的とした試験研究、技術指導などを行う研究機関になります。私は工業系ですが、農業系、保健系等分野もあります。一機関あたりの研究職員は多くないですけど(概ね50人未満)、47都道府県、全部合算すると結構な人数がいるはずです。結構人数がいる割に、公設試の情報ってネット上だと少ない印象はあります。

 ちなみに工業系の公設試だと安価に試験機を使用させてくるので、自身で試験機を用意することが難しい中小企業では凄く便利です。(農業系とかは細かい事情を知らないのでワカリマセン)

 採用方法としては、地方自治体が技術系職員として一括で採用した後に配属で振り分けるパターン、公設試として独自の採用をするパターンがあり、私の場合は後者でした。研究職員の数も限られており、毎年採用をするわけではないので、修了年に募集あったのはラッキーでした。また分野にもよりますが、倍率は低い場合も多く、私の場合も競争倍率は、メチャクチャ低かったです(ただし競争相手がいなかったわけではない)。機械系より就職が厳しめな化学系、バイオ系は競争厳しそうでした。(新卒の時の悪夢が...)。ちなみに入ってみると、旧帝大修士卒の人が多かったので、倍率は低くても、要求水準はそれなりに高いのかもしれません。

 試験ですが私の場合、一次試験が筆記試験で、二次試験が面接試験でした。ここら辺は普通の公務員の試験と同じですね(タブン...,当然試験方式は機関によって違います)。アフター5は博論執筆中のため、筆記試験の準備はほとんどできず、仕事の間の昼休みにヤマ勘で出そうと思ったところだけ教科書の練習問題を解いただけで臨みました(1日30分)。偶然、勘があたって超ラッキーでした。きっと上司には昼休みにも勉強する熱心な社員に見えたことでしょう。

 多くの場合、公設試の職員は地方公務員ということになります(私も一応、地方公務員扱い、ただし地方独立行政法人の公設試も徐々に増えている)。任期付き職員も数としては多くなく、雇用としては安定しています(妻子持ちで任期付きに転職とか妻に許可されるハズもなく...)。

 そして名前の通り、研究機関ですので、科研費も出せるところが多いです。

 ただし、定年までずっと研究ができるかというとそうでもない場合もあり、行政職に配置転換等もあるようです(公設試によります)。これも公設試によっても違いますが、研究に対するガチ度は国研や大学と比べてあまり高くないです。例えば公設試の研究職員の中には査読論文を出したことない人もかなり多いです。

(注 論文を書いていないからと言って、その人に能力がないかは別問題で、技術指導など別方面に力を入れている人もいたり、そもそも組織としてあまり査読論文自体を評価していない公設試もあるので、査読論文を書くインセンティブがない場合も...、論文書けば偉いってわけではないですね。大学教員とかでも同じだとは思いますが...。また研究に力を入れているところ、それ以外に力を入れているところなど、公設試によっても方針は様々なようです。)

 

まだ少数派ですが、博士取得後に公設試を就職先に選ぶ人も徐々に増えているとのこと。あとはポストドクターや若手の大学教員の人が転職先として選んだりとかも聞いたことはありますね。

3. 社会人学生(博士の学位)は転職に役に立ったか?

 結論から言うと、あまり役に立った印象はなかったです。

 公設試験研究機関、「研究」とついていますが、一部の例外を除いて博士は必要ないです。多くの場合、受験資格は修士修了、場合によっては学士でも可のところもありました。実際に同時に採用された人で博士を持っていない人のほうが多数でした。採用されたところ以外にも、ほかの公設試も受けようとしたのですが、年齢制限で引っかかって、そもそもの受験資格自体が私に無いところも多かったです。

 なので公設試(地方公務員)に採用されて安定した雇用のゲットを目指すだけなら、社会人学生として博士課程にワザワザ進学したのは、単なる遠回りだったと思います。むしろ年齢制限の分、選択肢が狭まってマイナス?

 

一応、全く役に立たなかったと言えば、そういうわけでもなく...

[1]博士課程に進学したからこそ、公設試に就職するという選択肢が自分の視野に入った。(HPで採用情報を見つけたのは偶然でしたが...)

[2]化学系の修士修了→機械工学の博士修了と、(結果的に)競争率の低い分野に鞍替えすることができた。

[3]博士の研究あったからこそ、就職試験時の面接、筆記双方でうまく回答できたことが設問があった。

[4]2次試験(面接)では研究実績もアピールポイントになった。

 

というように、(ちょびっとだけ)プラス面があったのは確かです。

 一方、去年のアドベントカレンダーでも書きましたが、民間の転職活動での評価は散々で、bizreachでは自分の専門分野に関する転職オファーはゼロでした。博士だからといって特別に声をかけてもらったようなことも無かったですね。

 博士修了だから必ず評価されるわけではない。このことはこれからも肝に銘じておきたい。

ちなみに転職して給料は下がりました。

金銭的なコストパフォーマンスからいうと、私の社会人学生&転職活動は最悪です。入学金&学費、3年間で約200万円だして、ワザワザ時間をかけて転職活動までやって給料下がってますからね。

 (注 イメージ図です)

 

ただし全国転勤の可能性は、なくなったというメリットはあります。(県内の転勤の可能性はありますが...)

 

4. 社会人学生の経験は仕事に役に立っているか?

 まず組織外では、学会から無給ボランティアの面倒事を押し付けられたり、学会の役員の就任依頼が来たり、査読依頼を受けたり、研究会に参加すると顔見知りが増えたり、社会人学生で出来た人脈・対外的な評価はメチャクチャ役に立っています。

 また転職先(公設試)でも社会人ドクターの経験はメチャクチャ役に立っています。社会人ドクターで何度も繰り返した先行研究を調べて、問いを立てて、解決し、報告をまとめるというのは今の仕事そのものです。

 さらに自分の所属する公設試で博士号をもっているのは、半分に満たない程度で、旧帝大修士では学歴的なアドバンテージはないに等しいのですが、博士号持ちには一目置かれる環境でした。博士号取得者も修士で採用されて、ある程度キャリアを積んでから博士号を取る例が非常に多いので、博士号持ちというので、初期の段階からその分野の専門家としての扱いは受けました。(当然ながら期待に沿える活躍ができなければ徐々に評価が下がって...[以下略]) 

 そもそも今の職場に転職したきっかけもやりたい研究があり、それを実現するのに必要な実験機材もそろっていて、その研究テーマ(に近い内容)をちょろっとだけやっていたからです。そういう意味ではやりたいテーマを見つけて、それができるところに転職したので、社会人学生を通じて夢を叶えたとも言えるのかもしれません。趣味が仕事になっただけとも。

 ただ、組織に所属するのが目的でなく、その組織内でやりたいことを成し遂げてこそ、はじめて目的が達成したともいえます。実際、今そのテーマにやっと少しだけ取り組み始めた段階です。なので、真の目標達成まで、まだまだ道半ばですね。

 

5. 終わりに

 私自身、社会人学生を通じてスキルは身についたし、研究を仕事とする夢も叶えることができました。社会人学生(ドクター)をやって本当によかったと思っています!

 

「もう一回社会人学生ヤリタイかも....」

 

 

 

 

 

ってつい先日いったところ、奥さんから

「絶対に許可しない(怒)」

と厳しい回答が...

隙あらば狙っているけどね。